【1分でわかるこの記事の内容の要約】
肋骨をみてみると、前に突出したり、横に開いたりしている状態がしばしば観察されます。今回はいわゆるリブフレアに伴うトピックを集めてみました。
臨床現場ではゴニオメーターで肋骨下角を測ることを一つの指標としても使えそうな報告もされていました。(健康若年者で約83°という参考数値)
ただし形だけの問題だけでなく、呼吸に伴う肋骨の可動、並びにお腹の動き方にも目を向けてみると、その機能性が見えてきます。
実際に腹部を前に出すような「横隔膜呼吸」では、呼吸に伴う換気量は上がるものの、胸部と腹部の非同期性が増加しているという報告がされており、呼吸法に伴う腹壁の筋群の活動もリブフレアにとっては重要な点になるかもしれません。
はじめに
今回扱うトピックは「リブフレア」になります。医学上の定義はなされていないにも関わらず、非常に市民権を得ているような概念かと思います。
リブ=肋骨、フレア=広がるというニュアンスが指す通り、見た目上肋骨が広がって見えるような現象を指しています。この現象を正面から取り扱った論文は今回見つからなかったのですが、近い内容や、補完するような内容の論文を紹介しながら、紐解いていきたいと思います。
肋骨の観察をするにあたって
巷で取り上げられているリブフレアも、実は定義がはっきりしていないのが実情かと重います。吸気時か?呼気時か?立位か?仰臥位か?など、その条件によっても、観察される角度は異なってくるかと思います。
また呼吸に伴う肋骨の動作に目を向けると
・吸気時、呼気時も拡がりっぱなし
・吸気時、呼気時も閉じっぱなし
・上部、下部の胸郭の動き
・腹部の動き
などが観察されます。この辺りも合わせて見ていくと、リブフレアがより多角的に見えてくる可能性があります。
以下では、このような内容を一つずつ見ていこうと思います。
肋骨の形をどうみるか?肋骨下角を指標にする見方から
まずはLee2018の報告から見ていきます。この研究では、胸骨下角(剣状突起と左右の第10肋骨の内側縁のライン)をX線、ゴニオメーターで測定したものの関連性が検討されています。
結果として、X線とゴニオメーターの測定値の間には高い相関性があり、評価の条件を同一にすれば、我々セラピストもベッドサイドで評価できる可能性を示唆しています。
ちなみにこの研究では健康な若年者25名が被験者として参加しており、肋骨下角の平均数値はX線では86°、ゴニオメーターで83°という数字が算出されています。
この数値を一般化するのは微妙ですが、一つの指標として使うのは良さそうな感じですね。(※ちなみにこの角度は仰向け、呼気後の数値になります)
「横隔膜呼吸」に伴う胸部、腹部の動きはどうなっているか?
ここではVieira et al. 2014の研究が参考になります。この研究では健康成人15名を対象に4種類の呼吸法に伴う胸郭、腹部の動きが検証されています。
腹部を大きく前に出す「横隔膜呼吸」では、腹部の寄与度は増加していましたが、胸郭の寄与度は低下しており、また胸郭と腹部の連動性の指標である同期性も低下していました。
ただしこの呼吸では腹部を前に出すような指示がされているため、通常の呼吸様式とは異なっている可能性もあります。
もし、このような呼吸法に取り組んでいる場合、肋骨下部の拡張はもしかしたら少なくなり、結果としてリブフレアという現象は観察されないかもしれませんが、その反面胸郭の拡張性は少なくなっており、適切に空気を取り込めているかという点においては疑問が湧きます。
横隔膜と肋骨の動きはどう関係しているのか?
横隔膜が動くと、肋骨がどのように動くのかについては、De Troyer & Wilson 2016の研究が非常に参考になります。
この研究では横隔膜の収縮に伴う胸郭の内部に起こる力について言及されています。横隔膜収縮時には単に上下方向の力が生まれるわけではなく、複数の力が同時に発生しています。
横隔膜の収縮(=横隔膜のドーム低下する)に伴って、まず胸腔内圧の低下が起こり、吸気が可能になります。この時に起こる力として
・胸腔内に尾側、内向きの力が働く
・横隔膜の付着部からは下部肋骨に頭側方向への力が働く
・腹腔内圧は下部肋骨を外側に押す力が働く
こんな力が働いていたりします。
これらの力の釣り合いの結果、見た目上、下部肋骨のフレアが観察される場合もあるかもしれません。単にフレアしているとだけみるのではなく、横隔膜のドームが下がらないのか、腹腔内圧の問題なのか、分けて考えてみるのもありかもしれませんね。(ちなみにこの辺がPRIでよく語られるところですね)
息を吐く際の腹壁の活動様式も見てみるべき
こちらは前回の内容でも紹介したKawabata & Shima 2023の研究が参考になります。
前回のブログ↓
dnm-pain-therapy.hatenablog.com
この研究では呼吸に伴う腹壁筋の活動を測定されていました。
ざっくりの内容になりますが、努力呼気で内腹斜筋、腹横筋の活動が上がり、姿勢維持課題において外腹斜筋の活動が増加していました。
安静時に肋骨がフレアしている場合に、例えば努力呼気による肋骨下部の動きを確認して、それでも戻らない場合、腹壁の筋群に目を向けてみる、というのも良い感じがします。
呼吸課題で姿勢や動きの変化が出ることもある
Ristovski et al. 2025では興味深い(個人的に)報告がされています。
この研究では若年男性26人を対象に、壁を使った90-90のポジションで22分間の呼吸課題による変化を見ています。
こんな感じ↓

結果として胸郭の拡張性、体幹の側屈、肩甲骨の可動性に有意差が出ていました。
リブフレアとの直接的な関係性を見ているわけではありませんが、呼吸による動きの変化を見たものとしては有用かと思います。
キューイングとして、かなり呼気が長めの指示になっていたので、上にあげた腹壁との関連性で考えてみると良いかもしれません。
終わりに
リブフレアを形態的な見方だけでなく、機能面などからみる見方を研究とともに紹介してみました。調べてみて個人的には感じたのは、まずしっかりと息を吐かせることからだなということです。臨床で、まず吐いてみましょうとやってみると、2、3秒で限界の人とか結構多いですからね。
参考文献
- Lee W-H. Reliability and Validity of Measurement of Infrasternal Angle by Radiographic Methods. Journal of Musculoskeletal Science and Technology. 2018;2(2):33-37. doi: 10.29273/jmst.2018.2.2.33
- Vieira DSR, Mendes LPS, Elmiro NS, et al. Breathing exercises: influence on breathing pattern and thoracoabdominal motion in healthy subjects. Brazilian Journal of Physical Therapy. 2014;18(6):544-552. doi: 10.1590/bjpt-rbf.2014.0048
- De Troyer A, Wilson TA. Action of the diaphragm on the rib cage. Journal of Applied Physiology. 2016;121:391-400. doi: 10.1152/japplphysiol.00268.2016
- Kawabata M, Shima N. Interaction of breathing pattern and posture on abdominal muscle activation and intra-abdominal pressure in healthy individuals: a comparative cross-sectional study. Scientific Reports. 2023;13:11338. doi: 10.1038/s41598-023-37629-5
- Ristovski A, Kapeleti M, Zlatović I, Mrdaković V. Acute Effects of Diaphragmatic Breathing on Trunk and Shoulder Mobility and Pulmonary Function in Healthy Young Adults. Journal of Functional Morphology and Kinesiology. 2025;10:325. doi: 10.3390/jfmk10030325