【1分でわかるこの記事の内容の要約】
呼吸が浅いと感じる時、問題は「吸えない」ことだけではないかもしれません。「吐けない」ことにも着目してみると、呼吸の奥深さが見えてきます。意識的にしっかり吐くことで内腹斜筋や腹横筋の活動が高まり、腹腔内圧が高まりやすい可能性も報告されています。また呼吸は、横隔膜、骨盤底などの協調関係も関係し、姿勢の支え方にも繋がってくる可能性があります。
呼吸の仕方によって使う筋肉に差がある
Kawabata & Shima 2023の研究では、呼吸パターンと姿勢の違いによって、腹壁筋の活動や腹腔内圧に違いが出ることが示されています。
この研究では、
①Q-Bre:静かな鼻呼吸
②Deep-Bre:腹壁を膨らませる鼻からの深呼吸
③Forced-Expi:口すぼめで腹壁がへこむまで完全努力呼気
④Exertion-Inspi:腹壁を膨らませないよう腹筋を等尺性収縮させながら、胸郭を広げる鼻吸気
という4つの呼吸課題を、仰向けと肘つきプランク姿勢で比較しています。
この中で、②、③では呼吸量の増加が見られ、①、④では呼吸量の変化は見られませんでした。
興味深いのはTrA(腹横筋)とIO(内腹斜筋)の活動量の違いで
①、②ではTrAーIOの活動値が低いままでしたが、③のようにしっかり息を吐き切ることで、活動が増加するという結果でした。
またこの呼吸様式と姿勢課題の組み合わせも行われており、肘付き姿勢においてはEO(外腹斜筋)の活動が増加していたが、通常の呼吸様式においては③以外では大きな活動は見られませんでした。
つまり深呼吸と一言で言っても、その呼吸に伴う活動には差があり、思った以上に腹壁筋の活動はされていない可能性が示唆されています。
吐く力は変えられるっぽい
吐く力は、最大呼気圧:MEPという指標で評価されることがあります。そしてそのMEPの数値を検証した研究も報告されています。
Fabero-Garrido et al. 2024では、呼吸筋トレーニング(RMT)と慢性腰痛の関係性を調べていました。
通常の運動療法に加え、RMTを追加することにより、MEPの改善の可能性が示されていました。一方で腰痛に伴う機能障害、疼痛、また姿勢制御に対しての改善可能性はまだ高いとは言えない感じです。
呼気筋力トレーニング(EMST)と肺機能に関して調べたTempleman 2020では、Fabero-Garrido et al. 2024と同様にMEPの改善可能性は述べられていましたが、肺機能に関してはあまり改善可能性はなかったという結論になっています。
このあたりは呼吸筋トレーニングも万能ではないという見方が必要かもしれませんね。
横隔膜と骨盤底は関係ありかもしれない
呼吸のトピックとして非常におもしろい着眼点を提供してくれるのがSicilia-Gomez et al. 2022の研究です。この論文は、非特異的腰痛のある人と、ない人で横隔膜・腹壁筋・骨盤底筋の超音波所見の違いが報告されています。
この研究はやや癖があって、アブストラクトと表、結論が違ってみえるため、細かな言及は避けますが、この視点を提供してくれているという点では非常に参考になるものだと思います。
臨床にどう活かしていくか
「まずは1回息を吐き切ってみましょう」から、介入してみることを検討してみても良いかもしれません。Kawabata & Shima 2023の研究にあったように、一生懸命吐くことで、TrAとIOの活動が増加する、そして腹腔内圧(IAP)の高まりも計測されていました。これは裏を返すと、深呼吸をしても、腹壁や腹腔内圧の働きが十分に高まらない人がいる可能性があります。
呼吸のもつ力は強く前回のブログでは主に頚部周りのトラブルに関して取り上げてみました。
dnm-pain-therapy.hatenablog.com
また、姿勢や腰痛との関連に関しても取り上げています。
dnm-pain-therapy.hatenablog.com
単純な声掛けですが「まずは吐き切ってみましょう」から、介入していくと、さまざまな変化が見えてくるかも・・・しれませんね。
参考文献
(1)Kawabata M, Shima N.
『Interaction of breathing pattern and posture on abdominal muscle activation and intra-abdominal pressure in healthy individuals: a comparative cross-sectional study.
Scientific Reports.』 2023;13:11338.
doi: 10.1038/s41598-023-37629-5
(2)Fabero-Garrido et al.『
Effects of Respiratory Muscle Training on Functional Ability, Pain-Related Outcomes, and Respiratory Function in Individuals with Low Back Pain: Systematic Review and Meta-Analysis.』
Journal of Clinical Medicine. 2024;13(11):3053.
doi: 10.3390/jcm13113053
(3)Templeman L, Roberts F.『
Effectiveness of expiratory muscle strength training on expiratory strength, pulmonary function and cough in the adult population: a systematic review.
Physiotherapy.』 2020;106:43-51.
doi: 10.1016/j.physio.2019.06.002
(4)Sicilia-Gomez et al.『
Abdominal and Pelvic Floor Activity Related to Respiratory Diaphragmatic Activity in Subjects with and without Non-Specific Low Back Pain.
Diagnostics. 』2022;12(10):2530.
doi: 10.3390/diagnostics12102530